財前グループ。

詳しくは知らないが、なんかデケェ会社で街のそこかしこに建っているビルは全部財前グループが関わっているらしい。

「響。やっぱり俺は、久音は怪しいと思う。偽名使ってたのが何よりも証拠だろ? 久音がここ来なくなった時期とも丸かぶりだし」

苛立ったように倉庫内を見回した三波。

少し前。
久音が「弟子にして下さい!」とここにやって来た日を思い出す。

1回はスパイかなんかだと疑ったが、実際は久音が見せる低い姿勢に簡単に信じてしまった。

でもまほが居なくなったあの日から、久音も俺たちの前に姿を現すことは一切なくなった。

ずっと三波は久音が怪しい、と目をつけていたのだ。

「ちなみに年齢も詐欺ってた。確か前聞いた時まほちゃんと同い年って言ってただろ? でも本当は俺らの1個上らしい」

「は? なんだよ、それ……なんでそんな嘘…」

「まぁ俺らを出し抜く為、だろうな」

完全に油断していた。

浮き彫りになっていく事実に、もっとあいつを警戒すべきだったんだ、と戒められるようだった。

「……どうする? 財前グループなだけあって、久音の居場所は時間掛かる。でも多分あいつはまほちゃんのこと、なにかしら知ってると思​────…」

あの日。

家にまほを1人置いていったことを、もう何度後悔したか分からない。

こんなことになるなら……、目を離すんじゃなかった。