【響side】

『……………お兄ちゃん!起きないの??』

遠くの方で、そんな声が聞こえた気がして飛び起きた。

「はっ……、はぁっ…はぁっ…」

くそ…夢かよ……

散らかった家の中を見回して、俺は荒い呼吸を整えた。

時刻は朝4時を回ったばかり。

どうやら昨晩はリビングで寝落ちしてしまっていたみたいだった。

まほが失踪して、もう1年が経とうとしていた。

未だまほは帰ってこないまま。

俺の時間はずっと、止まったままだった。

俺の力だけじゃどうすること出来ず、あの後すぐ警察に行方不明者届けを出した。

でも何の手がかりもなく、捜索は直ぐに打ち切られ、自力で探そうにも、限度があり正直八方塞がりだった。

それでも、俺は探し続けていた。

***

「中野久音。俺らにはそう名乗ってたが、偽名だった」

その日。

三波が新しい情報を持ってきた。

警察は宛にならない。

俺たちは常に情報屋。探偵。ありとあらゆる場所に頼み、まほに関する手がかりを何か1つでも探していたのだ。

「偽名?」

「あぁ、本名は財前(ざいぜん)久音」

「財前……って…」

「あぁ、あの財前グループの御曹司」