「以来、妻には世話になりっぱなしです」

健作さんはそう言いながら苦笑いした。

あの現場に健作さんでなく紀子さんが向かったのは、こんな事情があったのだ。

その紀子さんは青ざめた顔で座り込んでいる。

もうこれ以上ムリはさせられない。

別荘へはあたしたちだけで向かうことにした。

外に出る直前、紀子さんのつぶやきが聞こえた。

「この年になって、やっとのんびり暮らせると思ったのに…」

動揺から現実に戻ったんだろう。気の毒に。