「……私との婚約は、ディアマンテとエスメラルダのためになりますか?」
「ああ、勿論」
「実は私、『国のため』というのがどうにも寂しいようなのです」
クルトが、怪訝そうな表情を浮かべた。
それもそうだろう。王子である彼にとって、婚約など『国のため』に他ならない。そんなクルトにこのようなことを伝えても、呆れられて終わりかもしれない。
それでも。
「国のためと言うのなら、『私でいいのだろうか』とも……ずっと思ってました。エスメラルダには、もっと適任である者が沢山居ますから」
「俺はリセ以外、選ぶ気は無い」
「……それは何故ですか? 理由を伺いたいのです、私は」
図々しいということは自覚している。
それでもリセは、クルトの言葉が欲しかった。
彼の世話役になってからというもの、周りの期待に圧倒され、その期待はリセ自身の心を素通りしてゆくような……そんな寂しさがずっと胸にくすぶっていた。
そこから救ってくれるのはきっと、クルトからの言葉だけ。
「何を言うかと思えば」
「……申し訳ありません」
「そもそも、この婚約は俺の我儘なのだから」
「我儘?」
クルトが眉を下げ、申し訳なさげに微笑む。
「ああ、勿論」
「実は私、『国のため』というのがどうにも寂しいようなのです」
クルトが、怪訝そうな表情を浮かべた。
それもそうだろう。王子である彼にとって、婚約など『国のため』に他ならない。そんなクルトにこのようなことを伝えても、呆れられて終わりかもしれない。
それでも。
「国のためと言うのなら、『私でいいのだろうか』とも……ずっと思ってました。エスメラルダには、もっと適任である者が沢山居ますから」
「俺はリセ以外、選ぶ気は無い」
「……それは何故ですか? 理由を伺いたいのです、私は」
図々しいということは自覚している。
それでもリセは、クルトの言葉が欲しかった。
彼の世話役になってからというもの、周りの期待に圧倒され、その期待はリセ自身の心を素通りしてゆくような……そんな寂しさがずっと胸にくすぶっていた。
そこから救ってくれるのはきっと、クルトからの言葉だけ。
「何を言うかと思えば」
「……申し訳ありません」
「そもそも、この婚約は俺の我儘なのだから」
「我儘?」
クルトが眉を下げ、申し訳なさげに微笑む。