「つくづく、あの人達って回りくどいよね」

 驚いた。いつの間にか、隣にセリオンが立っているではないか。

 先日あんなことがあったというのに、よくもここへ顔を出せたなと。リセは今まさに未知の生物と遭遇している。

「セ、セリオン、あなた……ここへ何しに来たの」
「酷いな。俺はリセの味方なのに」
「あのね。周りを見て。あなたのお陰で、変な空気になっているの。分からないの?」

 リセはセリオンの耳元で、きっぱりと諌めたつもりだった。ところがセリオンは黙るどころか、さらに楽しそうに笑っている。

「いいね。もっと変な空気にしてしまおうよ。そして思い知らせてやろう、彼女達に」
「……何する気?」
「こうする」



 満面の笑みを湛えたセリオンが、突然リセの肩を抱いた。
 公衆の面前で……クルトとシルエラ達に見せつけるように。本当に信じられない。なんなのだこの男は。

「まあ!」
「リセさんったら仲がよろしいのね」
「クルト殿下、ご覧になって」

 セリオンに肩を組まれたリセを見て、シルエラ達はこの上なく嬉しそうに微笑んだ。
 彼女達に言われなくても、クルトはずっとこちらを見ている。
 そう……見ている。とても怖い顔で。

「ちょっと、セリオン……」

 リセがセリオンの身体を押し返そうとした、その時。