「クルト殿下。私達から提案がございます」
「なんだ」

 いつものテニスコートで、女生徒達がクルトを囲んだ。
 それも見慣れた光景だ。リセは相変わらず、壁際でそれを眺めている。
 
「殿下のお世話役ですが、是非私達にもお力添えさせて頂きたくて……」
「リセさんお一人では、なにかとご不便もおありでしょう」
「もしよろしければ、学園外でも色々とご案内出来ますわ」

 ついに、女生徒達のうち数名が世話役に名乗り出た。
 侯爵令嬢のシルエラを筆頭に、皆華やかで家柄も良いご令嬢達で……そう、リセよりもずっと。

 シルエラ達は名乗り出るタイミングを虎視眈々と狙っていたのだろう。リセとクルトがぎくしゃくとしている今、まさに絶好のタイミングのように見えた。

「俺は、リセが良いのだが」
「お言葉ですが、リセさんだけでは不十分なのでは」
「リセさんにもご友人とのお付き合いがありますでしょうし」
「ほら、ねえ」

 彼女達が、こちらを見てはくすくすと笑っている。
 なんだろう。この間のセリオンのことだろうか。なんて思っていると。