リセはもう腹を括るしかなかった。

「申し訳ございません!」

 リセはクルトに向かって勢い良く頭を下げた。額に、嫌な汗が流れる。

「私はメイド相手にありもしない事を話しました。後で全て訂正致します、そのようなことは無かったと。過去にも数々の御無礼を……大変申し訳なく、なんとお詫びして良いのか分かりません」

 頭の中が猛スピードで回転している。回転し過ぎて、空回りしている状態だ。
 もう、何から謝っていいのか分からなかった。気安く話しかけていたことや庭を連れ回したりしたことなども、ひとつひとつ謝罪していくべきだろうか……



「リセ」

 考えを巡らせていると、不意にクルトから名を呼ばれた。下げたままだった頭を、おずおずと上げてみると……

 突然口いっぱいにひろがる甘い香り。目の前には数粒、浮遊するチョコレート。リセは理解するのに数秒かかった。クルトの魔法で、チョコレートを食べさせられたのだと。