「まあ、念のため一応聞いておくけど」



一葉さんが脚を組み替えながら私にたずねる。



「きみが桐生ひよりっていうのは本当なの?」



綺麗な人の真顔は怖い。



そして、そんな人に事実関係を問いただされるのはもっと怖い。



一葉さんどころか、私をじっと見据える他3人の目からも無言の圧力のようなものを感じて、私は正直に答えた。



「たしかに、桐生ひよりっていうのは私のことですよ。桐生の方が偽名で、桜坂の方が本名ですけど……」



「やっぱりな」



棗がため息をついたとたん、あたりがしんと静まり返った。



きっと、彼らは如月のことを知っているのに加えて、よく思ってないんだろう。



だとすれば、私は今すぐにでもこの4人に「車から降りろ」と命じられて、いきなり車道に放り出されてもおかしくない状況にいるというわけだ。



そうなる前に早く手は打っておかないと。



というか、私があのムカつく『如月の彼女』っていう不名誉極まりない誤解だけは早急に解いておきたい。



「あ、あのっ!」



「どうしたの?」



「その、私が如月の彼女っていうのはちょっと違うんです。実は……」



「ダミーだったってこと?」



「えっ……⁉」



いきなり一葉さんにぴしゃりと言い当てられて、思わず面食らってしまった。



「本物の彼女は別にいて、日和はその子に及ぶ危害を受けるためのダミーを務めてた。ってことで合ってる?」



「はい……。って、何でわかったんですか⁉」



占いで自分の過去をズバズバ言い当てられたみたいにドキッとする私に、一葉さんは「そりゃそうだよ」と返事をする。



「あいつは僕と同い年で、ちょうど敵対関係にあるチームの総長だったから。言わば、因縁の相手ってやつだね」



因縁の相手――そういえば、如月は一葉さんのことを警戒していたな。



あれって、やっぱり2人の間に関係性が存在していたからなんだ。