「あの、一葉さん。私にべったりくっついちゃってますけど、いいんですか?」



「ん? 嫌だった?」



「いや、そうじゃなくて! ほら、婚約者――」



「僕に婚約者なんていないよ」



「えっ⁉」



待って、一体どういうこと……?



急に婚約者の存在を否定されて、内心ほっとしたのは嘘じゃないけど。



それ以上に驚愕の方が勝っていた。



「でっ、でも、なんだかんだでノアと婚約してるんじゃないんですか? 一葉さんのお父さんとノアのお父さんが意気投合して、そういう話になって……」