「あっ‼」



慌てた如月がしゃがみ込み、ナイフを拾おうと手を伸ばす。



でも、寸前のところで、一葉さんの長い脚がそれを阻止するように遮った。



「天城……っ! おい、それ俺のだぞ!」



如月がすかさず抗議の声を上げるものの、一葉さんは床に落ちたナイフを拾い上げると、黙ったままじっと彼を見下ろす。



重苦しい沈黙が続いた後、一葉さんが唇を開いた。



「昔、大きな交戦できみが僕に負けた時のこと、覚えてる?」



「……っ⁉」



「あの時のきみと何も変わってない。自分のために手段を選ばず、無理矢理押し切ろうとする。――だから、僕に負けるんだ」



「うるさい……‼」



カッとなった如月が、一葉さんに飛び掛かろうとする。



でも、すぐに一葉さんに足払いされて、無様にも床の上に前のめりの状態で倒れてしまった。



「学ばないな」



一葉さんは呆れたようにため息をつくと、そのまま私がいる所まで歩いて来た。



「日和、じっとしてて」



「は、はい……」