如月が据わった目つきで一葉さんを睨んだ。



直後、スラックスのポケットに手を入れて、棒のようなものを取り出す。



一見何の変哲もなさそうな細長いそれを、如月が器用に片手でくるっと回した直後。



ギラリと銀色の光を放つ、鋭い刀身が現れる。



嘘……。あれって、ナイフ……⁉



「天城、覚悟しろよ」



如月が一歩、また一歩と、一葉さんに向かって少しずつ距離を詰めていく。



一葉さんの言葉が如月の逆鱗に触れたのか、あるいは最初からそのつもりだったのか。



理由はわからないけど、あいつがあのナイフで一葉さんを切り付けようとしているのは見ているだけでもわかる。



一葉さんがいくら喧嘩が強いと言っても、あんな凶器で深手を負ったら、致命傷になってもおかしくない。



でも、手足をロープで縛られている私には、どう頑張っても如月を止めることは出来ない。



どうしよう……。このままじゃ、一葉さんも私も確実にヤバい。



命の危機とただならぬ緊張感に、今にも押しつぶされてしまいそうな私の頬を、やけに冷たい汗がつーっと流れていったその時。