「棗ーっ、大河ーっ! 二人とも、真面目にやってるー?」



突然降ってきた大声に顔を上げると、階段から理音さんが顔をのぞかせていた。



「言われなくてもちゃんとやってますぅ~!」



「理音さーん。来月の夏のボーナスははずんでくださいよーっ」



理音さんに軽口を叩く二人を背に、一葉さんは2階と1階をつなぐ階段を下り、玄関ドアの方へ走っていく。



あともう少しで外に出られる。



希望にも似た解放感に、胸が高鳴ったその時――……。