「あいつ、『正直結婚とか考えられない』って言ってたし、今まで実家に来たお見合い相手にも断りを入れてるんだよ。今回も丁重に帰ってもらってんじゃねーかな」



「そ、そっか……」



よかった。と続きの言葉を言いかける前に飲み込んだ。



棗は一葉さんのいとこだ。



一葉さんの近い親戚で、しょっちゅう顔を合わせていると思しき棗の言うことなら、かなりあり得る話だろう。



そう自分で解釈して、ほっと胸をなで下ろす。



……って、何で私、こんなに安堵してるんだ?



一葉さんがお見合い相手にどう対応するのかなんて、私には何の関係もない話なのに――……。



「ふ~ん。やっぱりそういうこと、か……」



面白がっているような声にハッと我に返ると、ニヤニヤしながら私の顔をじーっとのぞき込んでいる理音さんと目が合った。



明らかに面白がってるというか、何か良からぬことでも企んでいそうな顔に、全身に妙な緊張感が走る。



「な、何ですか理音さん……?」



「んー。さっきから日和ちゃんを見てて、ちょっと思ったことがあるんだけど」



「は、はあ……?」



何だろ? 変なことじゃなかったらいいんだけど……。



ドキドキしながら次の言葉を待つ私に、理音さんはニッと口角を上げて、



「日和ちゃん、一葉のことが好きなんでしょ?」