「日和さん」



ふと、頭の上から名前を呼ばれて、空になったグラスを唇から離す。



「大河じゃん」



現れたのは、大量の肉料理を大皿に乗せて持って来た大河。



ちょうど私の向かいの席に腰を下ろそうとしているところだった。



「珍しいね。一人でいるなんて」



普段から理音さんをはじめ、一葉さんや棗とも一緒にいるイメージを大河に抱いていたから意外だ。



で、そんな彼の主人である理音さんはというと、相変わらず一葉さんとバーカウンターで談笑していた。



今はそこに棗まで加わって、あたりにかすかな黄色い声があふれている。