「大丈夫? なんだか心ここにあらずって顔してたよ」



いや、そうさせたのは一葉さんでしょ⁉



助けてくれたのは嬉しかったし、あの場では合わせると決めたとはいえ、急に抱き締めてくるし、怒ると怖いし、私の頬までさわってくるし……!



おかげで、さっきから私の中でバクバク激しく暴れる心臓が、今にも破裂してしまいそう。



「日和、ごめんね」



ふと、一葉さんの申し訳なさそうな声が降ってきた。



「一葉さん……?」



いつになく弱ったその声に顔を上げると、不安の色が見え隠れする一葉さんの目と視線がぶつかる。



「僕がもう少し出てくるのが早ければ、きみがぶたれるのを阻止出来たかもしれないのに」



「いや、大丈夫です。心配してくれただけでもありがたいですし、ある意味決定的な証拠ができたようなものですし……」



お世辞でも気をつかっているわけでもない、思ったことをそのまま伝えたのに。



一葉さんはううんと力なく首を横に振った。



「だとしても、僕がぶたせたようなものだから。このお詫びは必ず返させて」