「あやかし王! いつまで寝ているつもりですか。もう昼過ぎですよ~!」

 部屋の外から聞こえる男性の声に、琴禰はハッとして目覚めた。

 隣には、惚けたように微笑む煉魁が、琴禰を抱きしめるようにして眠っている。

「煉魁様! 起きないと!」

 体を揺さぶると、煉魁は抱きしめていた力を強め、琴禰の体に頭を埋める。

「いいのだ、放っておけ」

 寝ぼけた声で、再び眠りにつこうとしている煉魁を無理やり体から引き離す。

「良くないです! 困っていらっしゃいますよ!」

 琴禰には誰かは分からないが、煉魁の臣下なのだろうということは声の若さから感じ取れる。

 琴禰に言われて、渋々起き上がる煉魁。

 逞しい体が目の前にあって、琴禰は顔を赤らめながら目を逸らした。

 脱ぎ捨てた浴衣に袖を通すと、煉魁は大きく欠伸をした。

「ああ、面倒くさい。このまま一生、琴禰と寝台の上で過ごしたい」

 冗談とは思えないくらい、やけに念のこもった呟きだった。

「琴禰はゆっくりしているといい。昨晩はだいぶ無理をさせたからな」