「今日から琴禰の部屋は俺の寝殿だ」

 煉魁は琴禰の肩を抱きながら、嬉しそうに言った。

「え⁉」

「そりゃそうだろう。俺達は夫婦になったのだから」

 煉魁はニヤリと微笑み、琴禰の肩を抱いていた手に力を込めた。

「そ、そうですよね」

(私達は夫婦、私達は夫婦、私達はふ……)

 気持ちを落ち着かせるために、心の中で反復していたら、余計に恥ずかしくなって、顔に火がついたかのように赤くなり、両手で顔を隠した。

 そんな様子の琴禰を見て、煉魁は楽しそうに笑う。

 心の底から幸せそうな笑顔に、結婚を反対していた者達は『仕方ないか』という気になってくる。

 あまりにもお似合いで、あまりにも幸せそうで、互いを思いやっているのが伝わってくる。

 これまでどんな女性にも興味を抱けなかった、あのあやかし王が、初めて恋した女性が人間だった。

 祝福してあげたいという気持ちが、皆の心に湧き上がる。

 そして、幸せいっぱいの煉魁は、愛する新妻を部屋に招き入れた。

「さあ、琴禰。ここが俺の部屋だ」