一方、琴禰から思わぬ形で求婚を受けた煉魁は、寝殿へと向かっていた歩を止め、先ほどまで会議が行われていた春秋の間へと向かった。

(あいつらまだいるかな)

 臣下が集まる会議の場で、琴禰の元へ早く行きたかった煉魁は、『うん、もう、それでいいよ』と気もそぞろに丸投げし、まだ会議は続いているにも関わらず出てきてしまっていたのだった。

 会議の進行具合が気になるから戻ったのかと思いきや、零れんばかりの満面の笑みを携えた煉魁は、春秋の間に入るなり議題とは全く関係のないことを声高に叫んだ。

「聞け! 皆の者! 俺がついに結婚するぞ!」

 真面目に会議を行っていた臣下のあやかし達は、突然の王の報告に、鳩が豆鉄砲を食らったような顔を見せた。

 しんと静まり返ってしまった場の空気を見て、煉魁は不服そうに眉を寄せる。

「おい、もっと喜べよ。俺が結婚するのだぞ? あれだけ結婚しろ、世継ぎはまだかと言っていたのに、その反応はないだろう」