この扶久という侍女、丁寧なのだが怖れ知らずの言動で、思ったことをはっきりと口にする。

仕事ぶりは真面目で口も堅いので信頼できるのだが、とっつきにくい雰囲気を醸し出している。

 扶久は部屋の奥から寝間着の浴衣を取り出すと、人間の横に浴衣を広げた。

「お体が汚れていますね。拭いて差し上げた方が宜しいかもしれません」

「そうだな、そうしてくれ」

 煉魁が扶久の仕事ぶりを覗き込むように隣で見ていたら、扶久の動きがピタリと止まった。

「……女性の着替えを見ているおつもりですか?」

 扶久は軽蔑するような眼差しで煉魁を横目で見た。

「違う、違う、そうじゃない! 今すぐ出る!」

「まあ、わたくしは、どちらでもいいのですけどね」

 扶久はふっと嘲るようなため息を吐いた。

 煉魁は急いで部屋を出ると、襖を閉めた。

 体を拭いて着替えるとなると、しばらく時間がかかるだろう。かといって、片時も側を離れたくなかった。

 煉魁は襖の横に腰を下ろし、ずっと待っていることにした。