扶久は、重めの前髪を額に垂らし、後ろ髪を襟足辺りで真っ直ぐに切り揃えている。

端正な顔立ちをしているがいつも無表情なので、まるで不気味な日本人形のようだ。

着物も飾り気のない黒地のものを好むので、白い前掛けをしていなければ更にうす気味悪かっただろう。

「この者に寝心地の良いものを着せてやれ。最上の客を扱うように、丁寧に致せよ」

「承知致しました。わたくしの命が懸かっておりますゆえ、誠心誠意尽くさせていただきます」

 扶久は深々と頭を下げて言った。

「命が懸かっているだと?」

 煉魁が不思議そうに問うと、扶久は顔を上げて煉魁の目を見据えた。

「はい。あやかしの国にいられなくなるのでしょう? 宮中の噂となり、皆が震えあがっておりましたよ。あやかしの国にいられなくなるということは、つまり妖魔に喰われるということ。このお仕事にはわたくしの命が懸かっております」

「お、おう。いや、そこまででは……。でも、まあ、それくらいの意気込みで対応してくれると有難い」