最上級の賓客を受け入れる宮中の襖を、手を使わずに念力で開ける。

そして柔らかで清潔な(しとね)の上にそっと寝かせ、布団をかけた。

 すやすやと気持ち良さそうに眠る人間の頭をなでると、胸の奥がきゅっと締め付けられ、温かな高揚感に包まれた。

(あどけない寝顔が、なんとも可愛い)

 この者のためなら、なんでもやってあげたいと思った。そのためには何が必要か。

(そうだ、ボロボロの服を着ていては寝づらいだろう)

「おい、誰か……」

 言いかけて口を噤む。世話をさせるのは、誰でもいいわけではない。信頼できる仕え人でなくてはならない。

 煉魁の頭に一人の侍女が思い浮かんだ。

(あいつはちょっと苦手だが、仕方ない)

「おい、扶久《ふく》を呼べ!」

煉魁が声を張ると、すぐに名前を呼ばれた侍女が現われた。

「お呼びでしょうか、あやかし王」