彼女を抱きかかえて宮中に戻ると、侍女や下仕えの者たちが駆け寄ってきた。

「なんですか、ソレは」

「おそらく人間だ」

 物珍しそうに彼女を覗き込む侍女たちに目もやらず、賓客を受け入れるための宮中へ歩を進める。

「人間⁉ そんな汚らわしいもの、雲の上から投げ捨てておけばいいのですよ!」

 侍女の一人が、袂で鼻を覆いながら侮蔑の言葉を吐き捨てた。

 すると、煉魁の表情が一変し、歩みを止めて、侍女を殺気のこもった目で睨み付けながら言った。

「この人間を侮辱し傷つけるようなことがあったら、この宮中どころか、あやかしの国にもいられなくなると思え」

 煉魁の言葉に、侍女たちは「ひっ」と小さく悲鳴を漏らし、青ざめた。

 煉魁は俺様気質なところはあるが、根は優しく親しみやすい。多少気に障るような失態をしてしまったとしても、ここまで本気で怒るようなことはこれまで一度たりともなかった。

 容赦のない物言いに、侍女たちはすっかり落ち込んでしまった。