「はい⁉ 無理に決まっているでしょう! それになりたくもありません!」

 秋菊は、目を見開いて拒絶した。

「なりたくないとか言うなよ~。俺だってなりたくてなっているわけじゃねぇよ~」

 あやかし王は朗らかに笑いながら言った。顔は笑顔だが、言葉は少し寂し気だ。

 秋菊は、失礼なことを言ってしまったかと思って少し落ち込んだ。

(そうか、あやかし王は、なりたくてあやかし王になったわけではないのか)

 自分だったらどうだろう、と秋菊は思った。あやかしの頂点に立つ、皆が自分にひれ伏せる。強大な力を持ち、あやかし王の敵になる者などいない。

 羨ましいという気持ちもあるけれど、自分がその立場だったら少し窮屈かもしれないなと思った。

「あやかし王が王位を継承して何年が経つのですか?」

「う~ん、百年くらいかな」

「その間に、お眼鏡にかなう子はいなかったのですか?」

「いないね~。国中の美女を紹介されたが、一人も可愛いとは思えなかった」