(あやかし王に会う前に、私は死ぬのかもしれないわ。でも、それでいいのかもしれない。私は自分の意思でここへ来て、そして力尽きた。殺されたわけじゃない)

 ついに琴禰は膝をつき、倒れ込んだ。体が雲の上に横たわり、ふわふわとして気持ちがいい。

(今度生まれ変わったら、誰かに愛される人生を送りたい)

 誰も琴禰を愛してはくれなかった。両親でさえも。

 誰かに必要とされ、存在を認めてもらえ、笑いかけてもらいたかった。

 優しくされたいと願うことは欲深いことなのだろうか。

 誰にも愛されない人生というのは、どうしてこんなにも虚しいのだろう。

(さようなら……)

 誰に向けての別れの言葉なのかわからない。さようならと告げても、別れを惜しんでくれる人などいない。

 そっと目を瞑ると、涙が横に流れた。

「おい、大丈夫か?」

 薄れゆく意識の中、琴禰を心配し気遣う言葉が上から注がれた。