淡い虹色で彩られた霧のような雲の上に琴禰はいた。

 これまであやかしの国に辿り着けた人間はいない。全ての力を使ってあやかしの国に飛んだので、琴禰は意識を保つだけで精一杯の状態だった。

 飛んだとはいっても、物理的に空を飛行したのではない。力を集中させてあやかしの国へ飛ばし、まるで糸を辿るように登っていったという方が表現としてはしっくりくる。

(ここが、あやかしの国。なんて美しい所なの)

 まるで、まほろばの常世(とこよ)に迷い込んだかのようだ。

 一歩一歩、足を踏み出すたびに、足首まで雲に沈む。でも決して落ちることはないので不思議な感覚だ。

 魑魅魍魎が跋扈する恐ろしい場所だと思っていたので、こんなに美しい光景が広がっているとは驚きだった。

(まるで天国のようね……)

 朦朧とする意識の中で、琴禰は図らずも笑みが零れていた。

 もう立っているのも難しいくらい、体はボロボロだった。