すると、琴禰の力が一気に解放された。

髪は古来より力が宿るものといわれている。髪を結ぶことによって力を抑える役目がある。それが解かれたことによって、琴禰の力は最大値を発揮できるようになった。

 こうなるともう、祓魔五人衆など敵ではない。

 長い髪が揺らめき、結界の中心に佇む琴禰の姿は神々しく美しかった。

 白磁の肌に、伏し目になると際立つ長い睫毛。

 この世のものとは思えないほど婉然(えんぜん)とした優美な姿は、まるで雲中白鶴(うんちゅうはっかく)の趣を感じさせる。

 皆が息を飲んで琴禰を見つめた。そこには冴えないぼんくらな少女はどこにもいない。圧倒的な美しさと強さを持つ、絶対的な強者だ。

「終わった。今日、祓魔は滅亡する」

 大巫女様が、呆けるように琴禰を見つめながら呟いた。

「お願い、もうやめて。皆を殺したくないの。このままでは力が暴発してしまう」