琴禰は鍛錬の続きを見られるので、目を輝かせた。

「と、その前に」

 煉魁は立ち上がる前に、琴禰に口付けをした。軽い口付けかと思いきや、思いのほか長いので、琴禰は終わらせようと身を引いた。

 すると、煉魁は琴禰を抱き寄せて、舌で無理やり唇を開かせ、咥内に侵入してきた。

 まさか練兵場の片隅でそんなに激しい口付けをされると思っていなかったので、驚いて離れようとするも煉魁はさらに激しさを増す。

 衛兵達からは見えない物陰にいるとはいえ、さすがに激しすぎる。

 琴禰の体を知り尽くしている煉魁は、一気に琴禰の体温を上昇させる。

 頬が高揚し、潤んだ瞳で煉魁を責めるように見つめる琴禰の色っぽさに、背筋がゾクリとする快感を覚える。

「それでは、いってくる」

 唇についた琴禰の口紅を親指で拭いながら、満足気に立ち上がる。

 腰がくだけるように、力が入らなくなった琴禰を置いて、煉魁は何事もなかったかのように衛兵達の元へ戻っていった。

(煉魁様ったら……)

 少しだけはだけた着物の衿を直して、恨みがましく煉魁の後ろ姿を見やる。

 しかし、たまに見せる少しいたずらっ気を秘めた瞳の煉魁もたまらなく好きなのだ。

 ご機嫌で気合の入った煉魁は、剣を持つと一際大きく空に舞った。

 まるで白竜のように中空にくねらせた体を遊ばせ、流星のように剣光をたなびかせる。

 その姿は誰にも真似できない唯一無二の美しさだった。



【完】