仲睦まじい姿を、あやかし達はこっそり観察して微笑み合うのだった。

 それから琴禰と煉魁は、様々な品物を見て、最後には、朱塗りの(くし)と飾り玉を物交し、楽しく過ごした。

 あっという間に日が暮れて、店から暖簾が外されてきたので、琴禰達も帰ることにした。

「は~、今日はとても楽しかったです。連れてきてくださりありがとうございました」

「俺も楽しかったよ」

「こんな素敵なお櫛を買ってくださり、ありがとうございます。大切に使いますね」

 琴禰は朱塗りの櫛を大事そうに両手で持ち、胸に当てた。

 とても似合っているので、煉魁は眦を下げる。

「琴禰はまるで、初めて買い物に来た少女のように何を見ても興奮していたな」

「実際その通りです。人間界にいた時も都会に出ることなんてほとんどなかったですから」

 煉魁は『そうだったのか』と驚きながらも腑に落ちる心持ちがした。

 琴禰の置かれていた状況があまりにも不憫で心を痛める。

(これからは、俺がたくさん楽しい経験をさせてやる)

 美味しい食べ物も、綺麗な着物も、特別な体験も何もかも。

(琴禰の初めては全て俺がもらう)

 煉魁は密かに心に決めたのだった。