「賑やかで楽しいところですね!」

 琴禰は弾むような足取りで、目を輝かせながら通りを見ていた。

 一方の煉魁は、黒い布を目元まで持ち上げて顔を隠しながら、おずおずと歩いていた。先ほどから、あやかし達の目が刺すように煉魁に向けられていた。

 恐らくだが、気付かれている。しかし、察しが良く良識のあるあやかし達は、これはお忍びで来ているのだなと思って、気付かないふりをしてくれている。

「わあ、色々なものがあるのですね。醤油の焦げたいい匂いがします」

 琴禰はくんくんと鼻を鳴らす。

 煉魁が匂いの元を探すと、穀物を薄く伸ばし円形の形にして、網の上でじっくり焼かれた煎餅が店頭の一角に並んでいる。

「食べてみるか?」

「いいのですか⁉」

 琴禰の目が大きく見開かれる。

「もちろんだ」

 煉魁は笑いながら焼き煎餅を二個注文し、小さな飾り玉と交換した。

 よほど高価な物だったのか、店主は手の平に置かれた飾り玉を二度見して、

「毎度あり~!」

 というご機嫌な声と共に、紙で半分包まれた焼き立ての煎餅を煉魁に手渡した。

 歩きながら、熱々の煎餅を頬張る二人。