邪魔だと思われないか憂慮してしまう気持ちと戦いながら、琴禰は勇気を出して煉魁の着物の裾をそっと掴んだ。

 すると、それに気が付いた煉魁が驚いたように琴禰を見る。

 琴禰は急に恥ずかしくなって、手を離してしまった。すると、煉魁はすかさず離した手を握る。まるで離さないと言いたげに、指を絡めた。

 煉魁は目を細めて微笑みを落とす。その笑顔があまりにも優しくて、琴禰は胸がいっぱいになった。

 琴禰は少しだけ頬を赤らめながら、嬉しい気持ちを表すように、はにかんだ笑顔を向けた。

 その笑顔がとても可愛くて、煉魁は目を見開いたまま固まる。

(俺の嫁は可愛すぎる)

(煉魁様、素敵)

 二人は顔を染めながら、互いに直視できずに目を背けた。

 しかしながら、繋いだ手はしっかりと握り合っていたのだった。
 

 人々が集う市は、にぎやかで様々な品物が交換されていた。色鮮やかな織物や漆器。そして、あやかし達の風貌も華やかで、彩りに満ちている。

 宮中のあやかししか接することがなかった琴禰にとって、庶民であるあやかしを見ることは新鮮な驚きだった。

 まず、見た目が妖魔に近い。それに、感じる力も弱々しい。

 宮中のあやかしは、精鋭の選ばれし者たちなのだとわかった。

 しかしながら、怖いとか不快だとか、そういう気持ちは一切湧かなかった。むしろ、戻ってきたような肌に馴染む感覚がある。