いつもより快活で肌艶も良く機嫌がいい大王を見て、煉魁はほっと胸を撫でおろした。

「ところで」

 大王はそれまでの柔和な雰囲気から一変して、鋭い眼光を際立たせた。

「琴禰さんのためにも、きちんと結婚式を行って国民に披露した方がいい」

「いえ、私は煉魁様と一緒にいられるだけで十分ですので……」

 琴禰は恐縮して首を振った。すると、煉魁が思いのほか大王の提案に食いついてきた。

「そうですね、今なら好意的に受け入れてくれそうです。なにより、俺が琴禰の花嫁姿を見たい」

 煉魁はニヤリと笑って琴禰を横目で見た。

 琴禰は恥ずかしくなって咄嗟に俯く。

「国民もさぞ喜ぶだろう。こんなに可愛い方が、あやかし王の花嫁になってくれるのだから」

 そうして結婚式と披露宴を行う話があれよ、あれよと決まっていき、長居をするのも体に障るので早々に部屋を下がった。

「まさかこんな展開になるとは思いませんでした」

 宮殿へ戻る道すがら、琴禰は少し興奮した様子で言った。

 人間界でもあやかし国でも疎まれ続けてきた忌み子である自分が、花嫁として歓迎される日がやってくるなど思いもしなかった。