「いつ行くのですか?」

「今日の宵の口までに来いと言われている」

「わあ、早速ですね。急いで用意しますので待っていてください!」

 そうして琴禰はすぐに扶久を呼び支度を始めた。

 待っている間、暇だったので猫と遊ぼうかと近寄ってみたが、シャーシャー背を逆立てて威嚇されるので触ることもできない。

 扶久にはすっかり慣れたのに、煉魁は今もなお警戒されているようだ。

 琴禰は正絹に色鮮やかな様々な糸で美しく織られた花模様の着物に着替え、髪も上げている。薄い化粧を施し、華やかな簪をつけていた。

「綺麗だ」

 煉魁は思わず本音が零れた。

「結婚のご挨拶に行くので、失礼のないようおめかししてみました」

 琴禰は少し恥ずかしそうに下を向いた。

「まるで結納に行くみたいだな。俺達は色々と手順をすっ飛ばしたから」

「あやかし国にも結納という文化があるのですね」

 琴禰は感心したように言う。

「言っておくが琴禰。あやかしの文化を真似して取り入れたのは人間界の方だからな」

「ええ、そうなのですか!」

「うん、まあ、今はいい。後々それらは教えるとして、挨拶が先だ」

「そうですね、行きましょう」

 二人は仲良く手を繋ぎながら、大王が療養する殿舎へと向かった。