宮殿内に入ると、琴禰が猫に餌を与えているところだった。

 愛情いっぱいの表情で猫たちを見つめる琴禰。とても美しい横顔だが、少し猫に嫉妬する心も生まれる。

「琴禰」

 呼びかけて振り向いた琴禰は、煉魁の顔を見ると満開の笑顔になった。

『勝ったな』と煉魁は密かにほくそ笑む。

「どうしたのですか」

 琴禰は小走りで近寄ってきた。可愛い。

「いや、実は……」

 言い淀む煉魁を見て、琴禰は不安そうに小首を傾げた。

(さすがに、そろそろ言っておかなければいけないだろう)

 煉魁は覚悟を決めて、大王の話をした。

「え、お父親がいらっしゃるのですか⁉」

 琴禰はまずそこに驚いた。

「うん、まあ、病気で長いこと伏せっているが」

「じゃあ、お母親もいらっしゃるのですか⁉」

「いや、母は俺を産んですぐに亡くなった」

「そうだったのですか……。煉魁様も人間のようにご両親の元から産まれてきていたのですね」

 感慨深げに呟く琴禰を見て、煉魁は『俺をなんだと思っていたのだ』と疑問が生まれる。

「あやかしも病気になるのですね」

「そりゃそうだろう、生老病死は生きるもの全てに訪れるものだ」