実の父親に内緒で結婚してしまった罪悪感と、なにより琴禰に酷い言葉を浴びせるのではないかという恐れがあった。

「一旦、保留にしておいてもらえないか?」

「駄目です」

 秋菊は強い口調で言い切った。

(これは本気で無理な時だな)

「とりあえず琴禰にも意見を聞いてみないと……」

「本日の宵の口までにお越しくださいね」

「待て、行くと決まったわけでは……」

「決定事項でございます」

 秋菊はぺこりとお辞儀して、早々に背を向けて歩いていってしまった。

 断固とした強い意思を感じる。

 これはいつものように、のらりくらりとかわしてはいけない案件だと煉魁は悟った。

(はああ、気が重いな)

 とりあえず、琴禰と話し合いをするために宮殿へと向かう。

 しかし、最近の琴禰は宮殿に留まらず、宮中内を自由に出歩いているので、いるとは限らない。

 あれから琴禰は、目に見えて明るくなった。

 心配事や罪の意識が消えたこともあるだろうが、猫を連れてきたことも大きいと煉魁は見ている。