不思議と琴禰の頭は冷静だった。焦りも、悲しさも、寂しさもなかった。

 やらなければいけないことは一つだったからだ。

 命を懸けて、愛する人が支えてきたこの国を守る。

 琴禰は溢れ出る力を使って、眠った体のまま祓魔村に転移させた。

 琴禰が目を開けた時、そこには日本刀が突き刺さったまま絶命している澄八と、血に染まって横たわる桃子がいた。

 突然現れた琴禰を見ると、瞳に畏怖を浮かべながら驚き固まっている大巫女とその介添えの方、そして祓魔四人衆。

 その状況を見て、何が起こったのかを琴禰は瞬時に理解した。

 そして大巫女も、琴禰が現れたことにより起こる最悪の事態を、瞬時に理解した。

 大巫女が声を上げようと口を開いた刹那、琴禰の体は爆発した。

 琴禰の体から稲妻のような光が激流のように空へ立ち昇り、雲がうずまき、唸るような音をとどろかせた。

そして、蓄えた力を放出するように、地上に直下した。

 その様はまるで、大きな落雷が無数に投下されたような威力だった。

 激しい稲妻と雷鳴が空を覆い、暴風が祓魔の村を飲み込んだ。

 そんな大きな爆発であったが、と同時に、琴禰はまるで誰かが覆いかぶさってきたかのような温かな感覚に包まれた。

(死ぬということは、こういうことなのかしら)