「ぼ、ぼ、僕を殺しても、あやかし王は死なない! それどころか琴禰を殺され、あやかしの国も破壊されたら、あやかし王は怒って祓魔を潰しに来るかもしれない!」

「いや、あやかし王に会って確信した。あやつは琴禰に心底惚れておる。血の契約が発動されたら、己の命が犠牲になろうとも、琴禰を守ろうとするであろう。琴禰の元に、あやかし王がいる今が絶好の機会なのじゃ」

「で、で、でも、でも!」

 動けない澄八は、必死に大巫女を説得しようと頭を回転させる。

(考えろ、考えろ! 俺の一番の武器である頭は動く。殺されてたまるか!)

「澄八よ、お前は自分が賢いと思っておるな。だが、お前はただの小賢しい男に過ぎない。血の契約が長年禁忌とされた理由が分からないのじゃろう? こんなに便利な術なのに、なぜ誰も使ってこなかったのか。あまりにも危険な術で、その強大な力ゆえ、命を奪われる者が後を絶たなかったからじゃ。人智を超越した力を浅はかに使うとどうなるのか。それが分からないとは、愚かな童よ」

 大巫女は不気味に微笑み、日本刀を持った男が澄八に近付く。

 澄八は顔面蒼白になり、半狂乱となった。

「やめろ、やめろ、やめろぉ~!」

 澄八の絶叫と共に、胸に日本刀が突き刺さる。そして、血の契約は発動された。