澄八が叫んだ瞬間、桃子の胸に日本刀が突き刺さる。

「逃げられると思うなよ。一家全員皆殺しだ」

 男は舌なめずりをして、突き刺した日本刀を引き抜いた。その瞬間、血しぶきが部屋中に広がった。

 血だまりの中横たわり絶命した桃子を見て、澄八は祓魔一族に裏切られたことを知る。

「僕は祓魔のために尽くしてきたのですよ! それなのにどうして!」

「祓魔のためとは笑わせるな。お前はいつだって自分のためじゃ」

 大巫女が侮蔑の眼差しで澄八を見下ろす。

「大巫女様は我々に嘘をついていたのだ! あやかし王は厄災などではなかった。それなのにお前たちはまだ大巫女様に仕えるのか⁉」

 大巫女を説得するのは無理だと思った澄八は、祓魔四人衆に向かって言った。

 すると、彼らは底意地の悪い顔をしてニヤニヤしながら答えた。

「確かに祓魔の中では大巫女様に異を唱える者が出てきたようだが、俺達は大巫女様の考えを支持する。妖魔が町に溢れかえれば、俺達に頼らざるを得ない。俺達の時代の幕開けだ」

 澄八は絶句した。

 しかし、もしも澄八が動けていたら、彼らの考えに同調していた。だが今は、その考えを認めることはできない。自分の命が懸かっているのだから。