「仮に今後、何らかの手段で術が使えるようになり、琴禰の力を発動させたら、俺は必ずお前を殺す」

 煉魁は怒りに満ちた目で澄八を見据えた。

 琴禰を殺すことは、すなわち自分の命を失う引き金となる。そう理解した澄八は、恐怖に慄いた。

「さて、それではあやかしの国に戻るとするかな。琴禰を安心させて思いっきり愛するとしよう」

 先ほどまでの残忍な表情と打って変わって、煉魁は嬉しそうに頬を緩ませた。

「待ってください! 琴禰の力を発動させないと誓います! だから動けるようにしてください!」

 澄八は無我夢中で切願した。

「信じられぬ」

 煉魁は一刀両断した。

「血の契約を失効させる方法を考えます。だからどうか……」

「俺は今すぐ帰りたい。動けるようになりたければ死ぬ気で失効させる方法を見つけることだな」

「必ず見つけます! だから……」

 澄八が言い終わらないうちに、煉魁は飛び立った。

 後に残された澄八は横たわりながら、いつもと変わらぬ空を仰いだ。

「くそう!」

 澄八の怒りに満ちた悲痛な叫びは、祓魔の村に響き渡った。