初めて聞く話に、澄八含め、村人たちは狼狽(ろうばい)し、周りの反応を窺うように辺りを見回した。

 これまであやかし王は醜い怪獣のような姿をしていると聞いていたのに、目を奪われるほどの美しさだったし、言い伝えは嘘だったのかと疑い始めていた。

「妖魔が人間界に来て何が悪いのじゃ。それこそ祓魔の出番ではないか。妖魔を退治できるのは祓魔だけ。祓魔一族は人間界で大いなる力を発揮し、絶大な権力と金を手に入れることができるのじゃ」

 大巫女の言葉に皆が驚いた。大巫女の側で仕えていた女が、信じられないと言った顔で問いかけた。

「大巫女様は、全てをご存知だったのですか?」

「ふん、愚問じゃ」

 皆は顔を見合わせてひそひそと話し出した。

 人間界に厄災をもたらすあやかし王を討ち取ることが、祓魔一族の念願だった。しかし実際は、妖魔という厄災が人間界に降り立たないように守ってくれている存在だった。

「意思一つで契約が発動されると言っていたが、発動の際に術式は使わなくても可能なのか?」