煉魁の言葉に、皆が一様に目を泳がせた。

 真実を言えば、煉魁が激昂するのが想像できたからだ。

「それは……」

 大巫女が答えようとすると、澄八が被せるように言葉を遮ってきた。

「僕が答えましょう。祓魔を滅亡に導く厄災だと言われた琴禰は、その汚名を払拭するために血の契約を結んだのです。祓魔にとって厄災ではないと証明するためには、それほど大きな覚悟を示す必要があったからです」

「殺されかけていたからか?」

「そうです、琴禰が生き延びるために必要な提案でした」

 澄八は、血の契約を結んだのは琴禰を救うためでもあったと煉魁に思われるように、巧妙に先導していた。

「そもそも、なぜ俺を倒す必要がある。俺が死ぬと困るのは人間たちの方だろう?」

 煉魁の言葉に、村人たちはざわついた。

 あやかし王が死ぬと人間が困るなんて聞いたことがなかったからだ。

「え、いや、厄災を落としているじゃないですか」

 戸惑いながら答える澄八に、煉魁は真実を告げる。

「何のためにそんなことをするのだ。俺はそんな嫌がらせをするほど暇ではない。いや、暇ではあるが、そんな悪趣味はない。むしろ妖魔が人間界に行かぬよう牽制している。俺がいなくなったら人間界は妖魔だらけになるぞ」