煉魁は顎に手を当て考え込んだ。

 澄八を殺せば琴禰も死ぬ。

 だが、放置していれば澄八が力を発動させて琴禰は死ぬ。

 そして琴禰の力が暴発すれば、あやかしの国はただでは済まないだろう。

(なるほど、琴禰が守ろうとしていたのはこれか)

 泣きながら離縁してくれと懇願してきた琴禰の様子を思い出し、その隠された思いに胸が痛くなる。

「琴禰が死んだら契約はどうなる?」

「その場合は、契約は失効。互いの寿命が尽きても同じことじゃ。血の契約はあくまで当人同士の意思が尊重される」

 大巫女の言葉に、煉魁は苦々しげに口の端を上げた。

「当人同士の意思ね。そのわりにはあまりにも琴禰が不利ではないか?」

「血の契約を持ちかけたのは澄八じゃからな。澄八が得になるように契約を結ぶのは当然じゃ」

「僕のためというよりも、祓魔一族のためですよ。それに、琴禰は契約を拒むことだってできた。最終的に同意したのは琴禰自身です」

 澄八は得意気に言った。

「なぜ琴禰は同意した」