「血の契約は決して破ることのできない誓約じゃ。琴禰は自らが助かるために、あやかし王を倒すという血の契約を結んだのじゃ」

 大巫女が立ち上がり、煉魁を見上げて言った。

「契約を破ろうとするとどうなる?」

「その者の意思に関係なく契約は発動される。琴禰は澄八と契約を結んだので、澄八の意思一つで琴禰の力は暴発する」

 大巫女の言葉に、澄八は得意気な笑みを漏らした。

「暴発すると琴禰は死ぬのか?」

「そうじゃ」

「契約を失効させるためにはどうしたらいい?」

「契約者を殺せばいい」

 サラリと言った大巫女の発言に、澄八はぎょっとなり、慌てて言葉を付け加える。

「僕を殺したら、その瞬間に血の契約は発動されて琴禰も死にますよ!」

 この契約は澄八に得のように思えるが、殺される危険もはらんでいる。

 琴禰が死んでほしくない者にとっては澄八の盾となるが、逆に琴禰に死んでもらいたい者にとっては剣となる。琴禰を殺すことより、澄八を殺す方がたやすいからだ。

「ふむ、なかなか厄介だな、血の契約とやらは」