愛し合っているのではなかったのか。

 澄八と結婚したいから離縁してくれと頼んだのは嘘だったのか。

 なぜあんなに泣いていた。

 琴禰は、何を守ろうとしていたのだ。

 煉魁は我慢できなくなって、風を切るように手を下から斜め上に掲げた。

 すると、強烈な突風と力で屋敷の瓦部屋が吹き飛んだ。

 壁もろともなくなり、村人たちは呆気に取られた。

 煉魁は彼らの頭上に飛び、冷酷な瞳で見下ろした。

「あれは?」

 村人が煉魁に気が付き、指をさす。

「あやかし王!」

 澄八が恐怖の面持ちで声を上げた。

「あれが、あやかし王? まるで人間みたいじゃないか」

 言い伝えとは、まるで異なる姿に、恐怖よりも驚きが勝っているようだ。

「血の契約とはなんだ。答えなければ、今すぐお前たちの息の根を止めてやる」

 煉魁は眉間に縦皺を入れると、剣幕を抑えた声で言った。

 村人たちはようやく自分たちの置かれている状況を理解し、悲鳴を上げて逃げようとしたが、見えない結界が張られていて、逃げ出すことができない。