家族含め、祓魔一族に殺されかけたと聞いていたので、琴禰は祓魔には戻らず、澄八と駆け落ちのような形で暮らす予定だと思っていた煉魁は、話の内容についていけなかった。

「あやかし王に恋をしたとは、やはり琴禰をあの場で殺しておくべきだったのじゃ。あの女は祓魔を滅亡に導く厄災じゃ」

 老婆の言葉に、煉魁は怒りが湧き上がる。

 今すぐ部屋に乗り込んで、祓魔一族を根絶やしにしてやりたいほどだ。

「お言葉ですが、大巫女様。あの場で琴禰に攻撃をしていたら、殺されていたのは我々ですよ? それはここにいる皆さんも分かっているでしょう?」

 澄八の言葉に、村人たちは目を逸らして黙り込む。

「だが、琴禰と、あやかし王が手を組んだら、我々などひとたまりもないでしょう。現状はむしろ悪化しているのでは?」

 村人の一人が言った。すると澄八は勝ち誇ったような顔で語り出した。

「あやかし王はまだ何も知りません。僕が琴禰の力を暴発させればいいのです。そうすれば、あやかしの国に甚大な被害をもたらすことができて、なおかつ琴禰の命も奪えます。あやかし王は琴禰を寵愛しているので、もしかしたら琴禰を助けようとして自らの命を犠牲にする可能性だってあり得ます」