宮殿に結界を張った煉魁は、腕を組みながらどこに行くでもなく宮中内を歩いていた。

 突然張られた強力な結界に、あやかし達は驚いていたが、あやかし王がいつにもまして不機嫌な様子なので、誰も理由を訊ねる者はいなかったし、話し掛ける者さえいなかった。

 煉魁は感情のままやってしまった自分の言動を少し後悔していた。

(あんなことをやって、俺は一生琴禰に恨まれるのだろうな)

 大嫌いな相手と結婚し続けなければいけない琴禰の気持ちを思うと、それが琴禰の幸せになるのか疑問だった。

 とはいえ、ああでもしなければ琴禰は今すぐにでもいなくなってしまいそうな気がした。

 そして、一生会えなくなるような予感もした。

 これでいいとは思えない。しかし、これ以外に方法が思いつかない。

(琴禰は俺を殺すためにあやかしの国にやってきたと言っていたな。どうして人間は俺を目の敵にしているのだ? そしてなぜ琴禰がその役目を負うことになった?)

 まだ知らない真実が隠れていそうで、煉魁は胸騒ぎがした。

(人間界か。これまで全く興味はなかったが、いってみるか)

 煉魁は立ち止まり、遠くを見つめた。