部屋に一人残された琴禰は、絶望感と焦りで頭が混乱していた。

(どうしよう。いつ力が爆発するか分からないのに)

 この強力な結界内で爆発すれば、被害はこの宮殿だけで抑えられるのではないか。

 いや、そんなに甘くない、と琴禰は頭を振って自分の考えを否定する。

(誰も傷つけたくないのに)

 無能のままであれば、こんなに悩まずに済んだのに。

 自分だけが傷ついて終われた。誰かを傷つけるくらいなら、自分が傷ついた方が心は軽い。

(煉魁様に血の契約のことを話すべき?)

 真実を告げれば、自分を殺してくれるだろうか。

 いや、たぶん無理だろう。

 むしろ同情して、何が何でも琴禰を救おうとするだろう。あの方は、そういうお方だ。

 血の契約は、決して破れぬ誓約。

 だからこそ、強い効力が発揮される。

 琴禰の裏切りを知った澄八が、いつ仕掛けてくるかわからない。

 人間界に辿り着き、己の安全を確認したらすぐに発動させるだろう。

 発動を遅らせる理由はない。むしろ、発動を早める理由なら山ほどある。

(一体どうすれば……)

 琴禰は頭を抱え込んだ。