涙で濡れた瞳は、見る者が胸をつかれるような苦しみに満ちたものだった。そして琴禰は、狂おしげに驚くべき真実を口にした。

「私は、あやかし王を殺す命を受けて、この国にやってきたのです。結婚してほしいと願ったのは、妻になればあなたの隙が生まれると思ったから。あなたの懐に入るためです。私は裏切り者の大悪党です。どうかこの首を斬り落としてください」

 嘘を言っているようには思えなかった。

 これまでの不可解だった琴禰の謎が、一気に紐解かれたような気がする。

(そうか、琴禰は最初から俺のことを好きではなかったのか)

 真実を知ってすっきりとした気持ちと、脱力感。

 裏切られていたことを知っても、憎いとは思えなかった。むしろ愛しい。それでもなお、琴禰を愛している。

「大悪党であればお前に自由はない。ここにいるのだ、いいな?」

 琴禰は絶望の眼で煉魁を見上げていた。

 涙が止めどなく溢れている。

 琴禰にとっては、一番辛い罪の償い方法なのかもしれない。

 それが分かったところで、手放す気はなかった。

 煉魁は宮殿に結界を張っていった。言葉通り、琴禰を逃がさないためだ。