溢れ出る涙に、煉魁はたじろぐ。

 抱きしめてあげたいが、嫌がられるかもしれないと思い、手を引っ込める。

 琴禰は止まらない涙を隠すように、両手で顔を覆った。

 そして、信じられない言葉を呟く。

「離縁していただけないのなら、いっそ私を殺してください」

 心が凍り付く。

(それほどあいつが好きか……)

 煉魁は、深い絶望の闇に突き落とされた気分だった。

 これほど強く望んだことはなかった。他には何もいらない、琴禰がいればそれだけでいいのに。

 たった一つの願いさえ叶わない現実を前に、虚無感に襲われる。

「死ぬことも、離縁することも、人間界に帰ることも許さない」

 非道な煉魁の言葉に、琴禰は膝から崩れ落ちた。

 声を上げながら泣く琴禰を見下ろすことしかできない。

 心の冷たさが体に伝染していき、指先が凍えるように冷たくなっていた。

「煉魁様、私は、私は……あなたを殺すために花嫁になったのです」

 琴禰の告白に、煉魁は目を見張る。