煉魁は、足元が崩れ落ちたかのように不安定になり、ふらふらとよろめいた。

 琴禰の幸せのためなら、何でもしてやりたい。

 琴禰が望むことなら、何でも叶えてやりたい。

 琴禰のためなら、自分の命すら投げ出せる。

 だが、この願いは受け入れることはできない。

「駄目だ、離縁は認めない」

 煉魁は、はっきりと拒絶した。

「そんな!」

 琴禰は顔を上げ、煉魁に詰め寄る。

「人間界に戻ることも許さない。琴禰は俺の側にいるのだ」

「それは駄目なのです、それはできないのです! 煉魁様!」

 琴禰は懇願するように切迫した面持ちで言った。

「必ず幸せにする。約束する。だから俺の側にいろ、琴禰!」

 幸せにする自信があった。

 誰よりも琴禰を愛しているし、生涯愛し続けると誓える。

 あの男の元にいけば、琴禰は不幸になる。

 あいつは腹黒い邪な気が内側から漂っている。琴禰を幸せにできるとは思えない。

 琴禰の幸せを一番に願うからこその言葉だった。

 琴禰は煉魁の目を見つめたまま、ポロポロと涙を零した。