後を追おうにも、琴禰の気配は消されている。

(さすがだな、琴禰)

 煉魁は苦笑いを浮かべると、神経を研ぎ澄ました。

 木の葉のざわめき、土が踏まれた足跡。自然のわずかな変化から、琴禰の居場所を探る。

(あっちだ)

 一足飛びで向かうと、そこには澄八と琴禰がいた。

 やたらと距離の近い二人を見て、煉魁はその意味を知る。

(あいつに会いに行くために部屋を抜け出したのか?)

 その理由は考えるまでもない。

 二人の関係はただの幼馴染ではないということだ。

 二人の間には、何か強烈な絆のようなものを感じ取っていた。

 あやかしの国に、琴禰を探しにやってきた澄八。

 そして、澄八を好きだった琴禰。

(そうか、そうだったのか……)

 煉魁はこれ以上二人を見ていたくはなくて、静かに寝室に戻った。

 そして今。

 離縁を告げられた。

 信じたくない現実が、目の前に差し出された。

「それは、澄八と一緒になりたいからか?」

 煉魁は呆然と佇みながら聞いた。

 琴禰は、煉魁がそんな勘違いをしていることに驚きつつも、その方が、都合がいいかもしれないと思った。

「……はい」